2020.3.27「踊りませんか」

道を歩きながら、ミュージカルのサウンドトラックばかり聴いている。
昨日は映画「ヘアスプレー」を観た。とにかくずっと楽しくて、踊りだしたくなる音楽が物語を運び続ける。前日に宝塚歌劇の「ミー・アンド・マイ・ガール」を途中まで観た。1995年月組の、天海祐希が主演を務めた回。天海祐希のスター性が強すぎて目が離せない。
それでずっと、その二つのサントラを繰り返し聞き続けている。それぞれ全く別の時代の音楽だが、どちらの音楽にも「多幸感」が通底している。道を歩きながらリズムに乗りそうになる。
リズムに乗って歩いている人を全く見かけない。そもそもいないけど。ここでいきなり踊りだしたらどうなるんだろうな。踊るくらい自由だろう。

今日はずっと空が曇っていた。明後日は大雪になるらしい。ふざけないでほしい。
人気の少ない曇天模様の街を歩きながら大音量でミュージカル音楽を聴いていると、「世界崩壊直前の躁状態のワンシーン」みたいな気持ちになる。美しいクラシック音楽を爆撃シーンのBGMに使った人は責任を取ってほしい。キューブリックを許すな。雨に唄えばを返せ。

ミュージカルといえばフレッド・アステアが好きだ。ユーロシネマでアステア特集をしている時に「有頂天時代」を観に行った。ばかばかしすぎてびっくりしたが、アステアのステップを大画面で見られる喜びは代え難い。観に来ている人たちは年配の方々ばかりだった。
そういえば映画「ジョーカー」でアステアが映ったシーンがあったことを思い出した。主人公が家のテレビでアステアを観ている場面。あの場面で初めてアステアを見た人にとって、アステアの印象は「ジョーカー」になるのだろうか。こうしてイメージは上塗りされていく。

自分の中に「イメージの上塗り」が起こることを恐れて、手をつけていないものがたくさんある。「ミッドサマー」も、美しい花々や北欧の景色、無印良品のBGMが怖くなるという話を聞いて、しばらく観るのを迷っていた。無印良品のBGMが好きなので。
でも「ミッドサマー」を見た後北欧の景色が怖くなったかというと全くそんなことはないし、私にとっての北欧の印象はトーべ・ヤンソンの文章の中にある。結局、「何を親とするか」なのだろうなと思う。

人事異動が嫌すぎる(職場が好きすぎるため)。ただでさえ四月が来るのが嫌なのに、好きな人たちが去り、好きなものたちも消え、愛する人たちと自由に会うこともできないとは。みんなよく人間の顔して普通に歩いてる。そろそろ踊りませんか?
こういうことを書くと「ヒトラー 最後の12日間」でドイツ降伏直前にヒトラーと側近たちが狂ったように踊りまくっていたシーンのことを思い出してしまう。色々な作品の色々な「崩壊直前」シーンばかりよぎって良くない。

「終末のフール」が本屋に積まれていて、かなり売れていた。こうなったら絶対に今は読み直さないからな。